「SF核戦争後の未来・スレッズ」人間がネズミを食べて…
解説は要らない。核戦争の恐ろしさをこれでもかと再現したドラマだ。当初、市民は事態を楽観視し、核廃絶を訴える演説に「ソ連の手先は帰れ!」と罵声を浴びせていた。だが、あっという間に地獄絵図となる。トランプのような理性ゼロの男が大統領であることを考えれば、このストーリーは深刻だ。米国民が恐怖に震えた62年のキューバ危機を描いた映画「13デイズ」(2000年)を思い出す。
米国の戦争映画には敵を爆撃する場面で、原始時代に戻せというような言葉が出てくる。「地獄の黙示録」ではキルゴア中佐(R・デュバル)がヤシ林の空爆を要請する際に「石器時代に戻せ」と言う。もし核兵器で敵国を石器時代に戻せば、自国も報復攻撃で石器時代に突き落とされ、周辺国も巻き添えになる。その先に待っているのが本作の阿鼻(あび)叫喚だ。トランプやプーチンの動きを考えると、人類はいつか石器時代に逆戻りするかもしれない。
(森田健司/日刊ゲンダイ)