「SF核戦争後の未来・スレッズ」人間がネズミを食べて…
1984年 ミック・ジャクソン監督
演劇評論家の山田勝仁氏に「すごいドラマだよ」と薦められて観賞した。核による世界戦争を描いたテレビドラマ。英国の公共放送BBCが物理学、医学、心理学などさまざまな分野の権威50人の協力を得て製作した。核戦争の映画といえば、邦画では「世界大戦争」(1961年)があり、日本が灰燼(かいじん)に帰す場面で終わった。一方、本作は核攻撃後の人間の苦しみが衝撃的だ。
198X年、ソ連軍がイランに侵攻して米ソの対立が深刻化する。そんな中、英国の中規模都市に住むルース(カレン・ミーガー)は妊娠し、恋人とのデキ婚を決めるが、間もなくソ連の核ミサイルが飛来。一瞬で平穏な暮らしを奪われるのだった……。
ひと言で表すと“汚いドラマ”だ。核爆発後、人々は赤痢やチフスに苦しみ、ゲロを吐き、失禁する。人間の黒焦げ死体にはウジが湧き、女性は頭皮の焼け焦げた赤ん坊を抱いて睨みつける。「食べ物をくれ」と押しかけた群衆を当局はガス弾で水平撃ち。食料どころか、飲み水もない。わずかな食料を盗むとその場で射殺。ネズミが大量に発生し、人間の死体に群がる。その結果、人々はネズミの死骸を食べて生き延びる。