不気味な実像を笑顔で中和させるパンサー向井の強い客観性
例えば、正反対なキャラクターである先輩のピース・又吉直樹と仲がいいことでも知られている。又吉は自著で向井を「内面は自意識と格闘する高校二年生の男子のようである」(ワニブックス「東京百景」13年8月26日発売)と形容している。
「とにかくラジオが異常に好きで、散らかった部屋の中央にピカピカに磨かれた大きなラジオを御本尊のように置き、それを真夜中に一人聴いて薄笑いを浮かべているらしい。僕が友達を選ぶ上で大きな条件となる気持ち悪さをしっかりと有している」(同前)
そう思うと、向井の爽やかな笑顔が、少し気味悪く、けれど身近で心地よいものに見えてくるから不思議だ。
「向井と一緒にいて嫌な気持ちになったことがない。てことは自分を出してない」とインパルス堤下敦は言う。それに対して向井は「トリオをやってるので、ボケの2人をいかに出すかっていう、割と自分を殺すタイプの仕事してるんです」(NHK「仕事ハッケン伝」14年8月20日)と答える。
「ドロドロしたムードを中和できる爽やかさを持っていると自負している」(ナターシャ「お笑いナタリー」15年3月30日)というように、向井は気配りと客観性でMCとしての信頼は厚い。その強い客観性は自らへも向かう。「お笑い好きの向井で言うと、ゴリゴリのお笑い番組に別に向井はいらないんですよ。でも、職業としては出たい。その葛藤と常に戦ってる」(テレビ朝日「アメトーーク!」19年5月30日)と。その葛藤はあまりにも残酷で魅力的だ。