窮屈で笑えない社会から逃げずウーマン村本はネタにする
だが、村本は違っていた。この頃、AbemaTV「土曜The NIGHT」などで社会的な話題を扱っていた彼は、「政治だけじゃなくて、政治もひっくるめた世の中の空気みたいな、政治のことを言った人が話を逸らしたり、そういうところに興味がある」(メディアシンク「デイリーニュースオンライン」17年5月12日)と勉強を始め、アメリカのスタンダップコメディーに傾倒していった。
アメリカでは当たり前のように、お笑いには社会問題などが出てくる。けれど、日本でそれを出すと逆に「笑いから逃げてる」と言われてしまうと彼は嘆く。テレビに出ないと芸人は「消えた」と言われてしまうが、自分の本業は漫才師。「だからおれはいつでもどこかのセンターマイクの前にいる」(村本大輔「note」19年12月8日)と村本は言う。
ネタ中にも村本は「みんながどういうテンションで聞いたらいいか分からないと言われました」と明かす。その「みんな」の中に、原発や基地問題、朝鮮人差別で苦しむ人は入っていない。村本は「いつでも『みんな』の中にいない人がいて、『みんな』の中にいない人が透明人間にされて、透明人間の言葉は誰も聞かれないようになる」とネタを続けた。
今の日本では、政治や社会問題を漫才に入れると笑いにくくなり、そんなのは漫才じゃないと言われたりもする。けれど、それこそが窮屈で笑えない社会だと、村本はセンターマイクの前で自分の考える「漫才」にこだわり続けるのだ。