3本の映画で理解を深めたい アメリカの人種差別問題
トランプ氏の分断政権を批判したジョーカー
「警官の首絞めによる逮捕術で黒人が命を落とす事件は14年にも起きており(エリック・ガーナー窒息死事件)、何度も法改正が議題となっています。30年以上も前にその残虐性と危険性を糾弾したリー監督は本作の出来に絶対の自信を持っていて、昨年のアカデミー賞授賞式でも、当時受賞させなかったアカデミーの姿勢を批判していました。結果的に彼の先見の明が証明された形ですが、こうした“予言”的映画はすぐれた社会派作品には時折あること。昨年のヒット作『ジョーカー』もその一つです」
アメコミ映画として史上初めてベネチア国際映画祭金獅子賞を受賞した犯罪ドラマ。R15+指定の容赦ない暴力描写で、母親思いの心優しい男が、いかにして最凶の悪党ジョーカーへと変貌したかを描いている。
「アメコミ映画と喧伝してはいますが実態は原作漫画のないオリジナル脚本で、中身は完全に現政権が進める分断政策批判です。弱者を見捨て、対立をあおればいつか必ずこうなるぞと、クライマックスの大暴動シーンで警告していますが、まさかこれほど早く同じ光景を現実で見ることになるとは」(前田氏)
長きにわたり不満をため込んできた社会は、ひとたび堪忍袋の緒が切れればそう簡単に元には戻らない。過去作品と映画作家たちが残した教訓がいま最も必要なのは、トランプ大統領自身かもしれない。