作曲・作詞家 中村泰士さん 映画「LIFE!」の衝撃と音楽観

公開日: 更新日:

 不朽の名曲「喝采」や「北酒場」で知られる作曲・作詞家の中村泰士さんは80歳を過ぎた今も精力的にライブ活動などを続けているが、70代で新たな音楽との出合いがあった。2014年に公開された映画「LIFE!」。スウェーデン人歌手、ホセ・ゴンザレスの音楽に衝撃を受け、サウンドトラックを何度も聴き、今も影響を受け続けている。

 昨年、傘寿を迎え、81歳になります。これまでは浜口庫之助さん、服部良一さんといった先輩を「師匠や」と言って勉強した時期もあるし、洋楽に影響を受けたこともありました。

 30代40代で音楽を作っていた頃は、まさかここまで音楽が好きになるとは思っていなかったけど、60代後半かな、プロの作曲家というところから抜け出して、音楽をすることの楽しさが徐々にわかってきて、70代になってからも楽しい。

 言ってもいいかな。これまで作ってきた過去の作品は葛藤がありましてね。はやらせないといけない、人にわかってもらわないといけない、覚えやすくないといけないとか、歌手に寄せる、客に寄せるという作り方にこだわっていた。

 ヒット曲を狙って、こんなに売れちゃっていいのかなとかね。自分の本分を知らず知らずのうちに侵されていたと思います。

 悩んでいたわけじゃないけど、6年前、当時話題になっていたベン・スティラー監督、主演の「LIFE!」を見に行きました。見ているうちにドーンとテンションが上がって、涙が出てきたんです。映画で流れたホセ・ゴンザレスの音楽にすごい衝撃を受けました。映像とホセがチョイスしているサウンドがものすごくよかった。5回は見ているかな。本当に理解しているのかと思ってサウンドトラックを何回も聴き、YouTubeも何度も見ました。僕の中で完璧なマイブームになりました。

 それで気がついたんです。音楽はもっと自由でいいということ。過去に売れた曲があるから、作曲家の先生だからという縛りが解けて、フリーで音楽をやってるおっさんでいいんやと。ホセの音楽を聴いて感動とともに反省もしました。

 ホセの音楽はサイモン&ガーファンクルの系統です。音楽的にはそんなに凝ったことはしていない。しかも自由です。自由、シンプルさって人の心を打つ。サイモン&ガーファンクルは当時のアメリカを感じさせる部分があったと思うけど、ホセの音楽の中にある自由さは世界です。その流れはずっとあったのに、ヒット曲、いい曲をその時々の点で聴いているから線にならなかった。ホセの音楽を聴いてサイモン&ガーファンクルのシンプルさがずっと続いていると感じました。

 例えば、日本でならあいみょんとかZARDを改めて聴いてみると、スタイルがシンプル。自分が感じていることをストーンと出している。すごいなと思います。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    松本人志「事実無根」から一転、提訴取り下げの背景…黒塗りされた“大物タレント”を守るため?

  2. 2

    島田洋七が松本人志復帰説を一蹴…「視聴者は笑えない」「“天才”と周囲が持ち上げすぎ」と苦言

  3. 3

    人気作の続編「民王R」「トラベルナース」が明暗を分けたワケ…テレ朝の“続編戦略”は1勝1敗

  4. 4

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  5. 5

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  1. 6

    松本人志が文春訴訟取り下げで失った「大切なもの」…焦点は復帰時期や謝罪会見ではない

  2. 7

    窪田正孝の人気を食っちゃった? NHK「宙わたる教室」金髪の小林虎之介が《心に刺さる》ファン増殖中

  3. 8

    井上真央ようやくかなった松本潤への“結婚お断り”宣言 これまで否定できなかった苦しい胸中

  4. 9

    菊川怜が選んだのはトロフィーワイフより母親…離婚で玉の輿7年半にピリオド、芸能界に返り咲き

  5. 10

    福山雅治は自宅に帰らず…吹石一恵と「6月離婚説」の真偽

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇