作曲・作詞家 中村泰士さん 映画「LIFE!」の衝撃と音楽観
今の音楽を聴いていて思うこともある
最近、自分の音楽のことを「Gポップス」と言ってるんです。Gentle、Gold、GreatのG。じじぃのGと、ええ年してじーとしぃのGもかな(笑い)。
①リズム、サウンドにかかわらず、心安らかに聴いていられる②時代を超えていつでも新しい③サウンドに音楽的な知性、品格を感じる④聴き終わった後、優しい気持ちになれる――が中身で、番外で僕のオール作品。
歌手で言えば、男なら小田和正、山下達郎、布袋寅泰、来生たかお、玉置浩二。女では松任谷由実、竹内まりや、ZARD、森高千里、あいみょん。南佳孝も入れようかな。いずれもシンプルという意味では共通しているでしょ。
「喝采」「北酒場」、桜田淳子の曲は「Gポップス」の代表曲です。ジャンルは違うけど、共通しているのはシンプルさだと改めて思います。「北酒場」は細川たかしのあのトーンが曲を押し上げたと思う。「北の~」という最初のフレーズにシンプルで突き抜ける感がある。あれがよかった。
今の音楽を聴いていて思うこともあります。若い人はグループでサウンドを作っている。しかも自分たちのサウンドにこだわりがあり、俺たちの生き方はなんだろうといったところから入ってくる。「俺ってやさしいよな」みたいな決まりきったセリフ、それが男の歌……。
それって違うと思うなあ。歌がはやるってそんなことじゃない。彼らを見ていると、音楽を作ることを出世のチケットにしているように感じます。そこは勘違い。音楽を出世のチケットにしてほしくない。
高音の時代もずっと続いている。ボーカルが高い声でキンキン歌う。それもそろそろ変わるかなと期待しています。ボーカルが自然な中央音域で歌い、女性ボーカルがユニゾンで一緒に歌う。ボーカルに力が入っていないのが好きですね。
今は弾き語りに凝っていて、時間があると家でギターを弾いています。ありがたいことに歌がどんどんできる。
去年からライブを各地でやっていますが、新型コロナウイルスの影響でこの間はまったく仕事がありませんでした。周りもみな同じ。早く復活してほしいと祈る気持ちです。今は無観客でライブをやっていますが、8月から観客を入れて行う予定です。
作曲家としての80代はなかなかいいですね。
(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)