平松愛理さん8歳で聴き腰砕けに「学生街の喫茶店」の魅力
完結しないメロディー構成が日本的ではなくてインパクト大
カラオケの定番としておなじみ、1992年に大ヒットした「部屋とYシャツと私」の平松愛理さん。人生を変えた一曲はGARO(ガロ)の「学生街の喫茶店」だ。72年に発売され、ミリオンセラーになった、あの独特のイントロと歌の美しいメロディー。そのギャップに魅了され、今でも大好きな曲だという。
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テレビの歌番組で聴いたと思います。私はまだ8歳かな。イントロはコードがずっと一緒で、タッ、タッ、タッ、タッと鳴っている。「妖怪人間ベム」みたいな感じがして、「どんな歌なんだろう?」と思ったら、《君とよくこの店に来たものさ》と歌が始まる。そこのギャップに腰砕けになりながらも、「すごいいい曲だ!」と思ったのが第一印象です。
最初は大野(真澄)さんが一人で歌っていて、サビの「あの時の歌は……」からトミーとマークがコーラスに入ると、ハイトーン、ミディアムハイトーンと声の交わる素質を持った3人がキレイにハモる。そこも魅力的でサビの最後「時は流れた」のコーラスでは、カウンターパンチを食らいましたね。
それから間奏になるとイントロと同じ雰囲気に戻る。ヘビ使いみたいな感じかな(笑い)。「歌の部分のメロディーがすごくいいのに、なんでこんなイントロと間奏をつけたんだろう?」と不思議でした。でも、そのアンバランスがインパクト強いんですよ。
あのイントロで聴く人の心を引き寄せる作り方をされたのかなと、ずっと思ってました。歌のメロディーに似たイントロをつけたら単に普通のいい曲になっていたかもしれません。
歌詞も好きです。「訳もなくお茶を飲み話したよ」の「訳もなく」というのがいいですよね。
サビの最初の「あの時の歌は聴こえない」のところは2人で聴いた音楽があって、聴いた日々があって、次の「人の姿も変わったよ」のところで2人で共有していたものが変わったんだなとわかる。2人で育んだ時間を感じてから、「時は流れた」と続く。
そこまでが「ここがサビです!」というサビではなくて、さりげないメロディーなのもすごく好きです。
「時は流れた」というフレーズで、フランス映画の「男と女」などの、ヨーロッパの映画の雰囲気も感じました。アメリカや日本の映画だとちゃんと完結して終わるものが多いけど、ヨーロッパだと登場人物にそれぞれの生き方や考え方があって、それを見せた上で「あとは自分で考えてね」という感じで終わる映画が多いですよね。「学生街の喫茶店」には幼心にヨーロッパ映画の風を感じましたね。当時流行していた歌謡曲で感じるような“日本”をあまり感じなかったです。