医師・おおたわ史絵さん「笑いの健康体操」を映像化したい

公開日: 更新日:

「ホンマでっか!?TV」「情報ライブ ミヤネ屋」などテレビのコメンテーターとしても活躍する医師のおおたわ史絵さん。2年ほど前から刑務所など受刑者矯正施設での矯正医官として活動している。最近は受刑者に「笑いの健康体操」を教え、好評だというおおたわさんが「死ぬまでにやりたい」ことは自身の活動の映像化(!?)。

■血圧が下がる、血糖値が下がる、アレルギー細胞が減る

「笑いの健康体操」を私自身が医学の学会で体験した時、気分が軽くなった気がしました。笑いには血圧が下がる、血糖値が下がる、アレルギーの細胞が減るなどいろいろな効果があることがエビデンスとして出ています。笑いを体操に取り入れる方法はインドから発祥したものがあり、100カ国以上でカリキュラムとして行われている方法なんです。

 かつての日本の刑務所は監獄法という法律のもとにあって、「しゃべらず、笑わず、おとなしく」という趣旨がありましたから、笑うなんてあってはいけないことでした。

「笑いの健康体操」を日本の受刑者にも行ってみたらいいんじゃないかと考え、昨年取り入れました。日本の刑務所では初めての試みです。

 刑務所の中のカリキュラムは1年先まで綿密に決まっていますし、取り入れるのは簡単にはいきませんでしたが、理解のある所長や幹部が私のやりたい思いをくんでくれて「トライしてみましょう」とチャンスをつくってくれました。

■笑いのなかった受刑者たちの変化

 やり方としては授業の一環として「笑いの健康体操」を受刑者たちの前で私が実践した後、受刑者みんなでやります。私が笑わせるわけではなくて、体操として割り切って笑う。具体的なやり方はユーチューブで「笑いヨガ」と検索しますと、外国の動画も日本のものも見ることができます。

 私はヨガやインド文化に傾倒しているわけではないので、あえて「笑いの健康体操」という言葉を使っています。リズムにのせた体操の中に笑い顔と、笑い声が入る。1時間程度の授業のうち、体操の前後に説明したりアンケートを取るので、体操自体は30分ほど。

 矯正医療の授業の一環としてデータを取るためにアンケートを取っていて、体操をやる前後で気分の変化ははっきり出ていますね。いい方向にいってます。

 犯罪者たちは笑いながら生きてきた人たちではないんですよ。親に育てられていないとか、ちゃんと学校に通えてないとか、成育環境が恵まれてない人が多く、周りに信用できる人がいない中で育った人がいっぱいいます。笑うことが今までなかったわけですね。

 アンケートの自由に書いていい欄を読むと「自分は笑うことを随分忘れていたけど、今回の体験で笑うことは気分のいいことなんだと知った」とか、「笑うことでとっても気持ちがよくなったので、この気持ちを忘れないで、外に出てからはここに戻ってこないように暮らしていきたい」と書いてくれる人もいるので、少しは意味があるのかなと思っています。

 笑うことで気分が明るくなり、いい方向に傾くんですね。一般の方にとっても、体操として笑うことは意味があると思います。

 大手百貨店の売り場担当者の方たちの朝の朝礼で「笑いの健康体操」を取り入れた試みがありました。数カ月後にアンケートを取ったら「接客の時のストレスが減った」「ちょっとイヤだなと思うことが減った」「会社に行くモチベーションが上がった」など、大きく影響があることがわかっているので、受刑者に特化したことではないと思います。

 ニコニコ笑いながら人の悪口を言うのは難しいでしょう? それと同じで、笑いながら罪を犯せる人はあまりいないと思うんですよ。受刑者への「笑いの健康体操」をこれからも続けたいと考えてます。

■私も一瞬役で出演したい

 私はあまり目標を立てるほうではないですが、刑務所での体験はまれなものですし、日本で初めて「笑いの健康体操」を取り入れたこともまれなので、死ぬまでにやりたいこととしては、自分の体験してきたことを映像化できたらいいなと思います。

 アメリカなど海外ドラマには「プリズン・ブレイク」とか刑務所ものが多いですよね。実際の刑務所の中には面白いエピソードがいっぱいあるので、シリアスじゃなくてコメディーでも、作品化できたらと。

 見た人が刑務所の中に興味を持ったり、理解してくれたらいいですし、それも刑務所の中の医療、プリズンドクターという世界も知ってもらえたら面白いかなと思います。

 映像化された際には、私がモデルのドクターはステキな主演女優さんに演じてもらいたいですね。私はヒチコックみたいにチラッと出演しようかな、なんて考えてます。やり手の女性刑務所長役がいいかな。

 ◇  ◇  ◇

■実母を処方薬の依存症で亡くした自身の経験をつづった著書「母を捨てるということ」(今月7日発売/朝日新聞出版 1400円+税)は、刑務所で働くきっかけにもなった。

▽おおたわ・ふみえ 東京都生まれ。医師(総合内科専門医)。テレビのコメンテーターとしても活躍。刑務所の受刑者矯正施設で矯正医療を務めている。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出