京アニ事件想起の漫画「ルックバック」が話題 クリエイティブの力を奪う配慮は必要か
そしてこの作品の反響要素の一つとなっていたのが、今作が2年前に起きた「京アニ放火事件」を彷彿とさせる描写があるという点だ。
「絶望の先にこそある希望」と「喪失から得られる強さ」に満ち溢れた物語の側面もありつつ、京アニ放火事件でも感じたようなえもいわれぬ悲しみと痛みが読了後、ずっと心に点在していた。
しかしその悲しみと痛みは決して、悪い意味ではない。むしろ逆で、それこそが「人を動かす原動力」になり得るのだと筆者は捉えたい。今作はあの惨たらしい事件への哀悼でもあり、はなむけの意味も含まれているのだろう。
だからこそ8月2日、ジャンプ+編集部が「熟慮の結果、作中の描写が偏見や差別の助長につながることは避けたい」というコメント共に発表した「作中に登場する犯人の描写修正」は非常に残念で仕方がなかった。そしてこの場合の偏見とはなんだろうか? とも思った。
作者が本当に伝えたかったテーマやメッセージを歪ませるほどの偏見があったとはどうしても思えず、ただ修正前の作品の説得力が損なわれてしまっただけのように感じた。