京アニ事件想起の漫画「ルックバック」が話題 クリエイティブの力を奪う配慮は必要か
■クリエイティブの力を奪いかねない配慮
確かに統合失調症の特徴が描かれているようにも受け取れ、統合失調症を抱えている方々の中には、複雑な気持ちを抱いた人もいたのかもしれない。実際、今作に対し、統合失調症患者を名乗る人から「人を殺す可能性がある存在として描かれるのはつらい」という声が上がったそうだ。ただ、正直「人を殺す可能性」なら誰しもに存在している。
感受する側は自分は犯罪など犯すわけがないと無意識に思い、思わず被害者側の気持ちに立とうとしてしまうが、自分が何かのきっかけで心が壊れ、殺す立場になってしまったら……という意識を持つことが、あのような痛ましい事件をもう2度と起こさないために大切なことなのかもしれないと今作を読んで改めて実感した。
一人の漫画家が人生をかけて書き上げた今作は、紛れもなくこの先の素晴らしいクリエイティブを生み出す影響力のある作品であったのだ。
だからこそ、批判を覚悟であえて問いたい。クリエイティブの力を奪う、今回の配慮は本当に必要だったのだろうか?