Z世代の若者たちにスティーブ・マックィーンを薦めたい
若くして逝った我らのヒーロー、スティーブ・マックイーンも、ひどい思春期を過ごしてきた。賭け事が好きな曲乗り飛行士の父親が、ノミ屋の友人からスティーブという名をとって付けたまま息子を置いて消え、母親とインディアナポリスからロサンゼルスと引っ越すと新しい継父が現れ、殴られていじめられて育った。マックは商店街を荒らしまくる不良グループに加わって窃盗を繰り返したとか。とうとう、14歳になったマックは州立少年院に送られ、脱走しては戻されて、あらゆる重労働を体験したそうだ。
コロコロ男を代える母から逃げて一人でニューヨークに出て、タンカーの船員になってキューバやドミニカに。そこで大工見習いをして、またテキサスに戻って売春宿でタオルボーイをしたり、油井で下っ端の石油掘りをしたり……はたまた、見せ物巡業の一団に入ったり、カナダまで放浪してきこりをした後、海兵隊員になったり。除隊後はサンダル工場に勤め、ボクサーを目指したり、マンハッタンでばくちの集金係や百科事典セットまで売り歩いた。ミズーリの農家出の少年は、いつの間にかコトやモノや人の情緒が分かる21歳の大人になっていた。家族はいなくても社会や友人が彼を育ててくれたのだ。