著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

“失われ続けている世代”のことを障子の張り替え政権の後釜たちは分かっているのか

公開日: 更新日:

「コロナ対策に専念するから首相を辞めます」って、今から何をするというんだ。おまけに、竹やぶからゾンビみたいに、ゾロゾロ現れた後釜候補の集団も見るからに無残なものだ。誰一人、一国の主にはとても見えない顔つきだ。この閉塞しきって、とげとげしくギスギスした社会をどう変えようというんだ。時代の闇をどう切り開くというのか。そのうち、解散総選挙で自公与党は過半数も取れず大敗して政局も総崩れして、何もかも「ご破算で願いましては」となるのがオチじゃないのか。

 カネもない、職もない、夢も希望もない、閉じられた狭い世界でスマホをいじるその日暮らしが精いっぱいの、20代半ばから40歳の男女が今、どれほど多いことか。バブル崩壊から30年、そのバブルさえ知らず後の就職氷河期の中で育ったミレニアル世代(1980~2000年ごろに生まれた若者)、置いてきぼりにされ“失われ続けている世代”のことを、障子の張り替え政権の後釜たちは分かっているのか。

 東京の小田急線車内で、客たちに次々に包丁で襲いかかった男が逃亡の揚げ句、コンビニで「ニュースに出てる事件の犯人です。逃げるのに疲れた」だと。サラダ油をまいて火をつけようとした愚か者だ。36歳、派遣社員。まさに“失われてきた世代”だ。「幸せそうな女を見ると殺したかった」「勝ち組が憎かった」とも供述した。勝ちと負けで人を分けてしまうような許し難く閉ざされた社会で品評され、自分を認めてくれる人はどこにもいなかったんだろ。周りに見下され、僻んでばかりで不幸せと思い、現に不幸せだったこの男に、自分を初期設定リセットして出口を探す能力など残ってるのだろうか。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  4. 4

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  5. 5

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  1. 6

    萩原健一(6)美人で細身、しかもボイン…いしだあゆみにはショーケンが好む必須条件が揃っていた

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  4. 9

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  5. 10

    “年収2億円以下”マツコ・デラックスが大女優の事務所に電撃移籍? 事務所社長の“使い込み疑惑”にショック

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    べた褒めしたベッツが知らない、佐々木朗希"裏の顔”…自己中ぶりにロッテの先輩右腕がブチ切れの過去!

  2. 2

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    巨人・田中将大“魔改造”は道険しく…他球団スコアラー「明らかに出力不足」「ローテ入りのイメージなし」

  5. 5

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  1. 6

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  2. 7

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…

  3. 8

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  4. 9

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  5. 10

    僕に激昂した闘将・星野監督はトレーナー室のドアを蹴破らんばかりの勢いで入ってきて…