形骸化した「NHK紅白歌合戦」の末路…紅白別の司会者を廃止、識者はどう見る?
大晦日の「第72回NHK紅白歌合戦」の司会が、俳優の大泉洋(48)、女優の川口春奈(26)、NHKの和久田麻由子アナ(32)と発表された。
今年から「総合司会」「白組司会」「紅組司会」という区分は廃止され、3人で「司会」という形になるという。司会についてNHKは「番組の進行とともに、紅組白組はじめご出演いただくすべての歌手・アーティストを応援する存在」と説明している。
■テーマは「Colorful~カラフル~」
番組のテーマは「Colorful~カラフル~」。コロナ禍で失われた生活の彩りを取り戻し、さらに多様な価値観を認め合おうという思いも込められているという。
確かに最近の紅白は、アーティストが歌う楽曲に、司会者が紅組白組関係なく手拍子をするなど、「歌合戦」の要素は少なくなってきている。その背景には、「男女で紅白に分かれて対決する」という番組の基本コンセプトに対し、ジェンダー平等やLGBTQ(性的マイノリティー)への認識の高まりも関係しているのかもしれない。
「時代に合わなくなってしまっていることは自明」
しかし、作家の麻生千晶氏は「本当にそうでしょうか」としてこう続ける。
「結局、歌手の方は男女で紅白に分かれてやるのでしょう。組の分け方を変えるとか、個人で歌のうまい順で競い合う大会に変更するとかならまだしも、根本はなんら変わっていない。それに司会は、NHKの和久田アナに加えて、きっちりと男女ひとりずつ。そういうことを意識されているのであれば、中途半端な感じがしますね。個人的には、私はイケメン好きですから、もっと大胆に、イケメンばかり使うくらいの思い切った変更をしたっていいはずです(笑い)。確かに大泉さんは大騒ぎして明るく両組を応援するのは似合いそうですけどね」
メディア文化評論家の碓井広義氏はこう言う。
「やはり基本構造は変わっておらず、小手先な感じはしますね。そもそも“歌”というものを男女の歌い手に分けて競い合わせること自体にも違和感を覚えますが、ラジオで同番組が開始されてから70年以上経ち、それもまったく形骸化しています。『紅白歌合戦』の『紅白』は、もともと“源平の戦い”から来ていると思いますが、対立軸にないものをいまだに分けて戦わせていることは無理がある。もはやジョークの類いですよ。時代に合わなくなってしまっていることは自明です」
碓井氏は続ける。
「しかし、NHKにしかできないキャスティングで、年に1度、人気アーティストが一堂に会する豪華な番組で、楽しみにしている人もたくさんいることは事実ですから、いずれは、紅白歌合戦という形式をやめ、『○○歌謡祭』などと“超豪華な大型音楽番組”としてやっていくのがいいのではないでしょうか」
すでにスポーツの世界ではLGBTQへの理解が進んでおり、今夏に開催された「東京五輪」では「多様性と調和」を掲げ、性的マイノリティーを公表したアスリートは過去最多の183人に上ったという。また「電通ダイバーシティ・ラボ」が今年4月に発表した全国の20~59歳の6万人を対象とした調査では、自分がLGBTQに該当すると答えた人の割合は8.9%に達している。
時代とともに番組のコンセプトが変わるのも必然だ。