<91>野崎幸助さんの通夜はマスコミをシャットアウトして行われた
通夜が始まる前から小雨が降りだし、斎場の外には傘を手にした記者やカメラマンが立っている。
「マスコミの取材は全部断ることにしたから」
金庫番の佐山さんが突然言い出した。私は事前に、参列者が斎場に入る前に集まったマスコミが祭壇の写真を撮影することを許可しようと提言し、佐山さんも早貴被告も了承していた。そうしないと取材陣の競争が激しくなってしまうから、ガス抜きのために必要だと説得していたのだ。
「取材をさせるべきですよ」
「混雑するのはイヤだから」
私が説得してもかたくなだった。
佐山さんは取材に慣れていないし、現場を知らない。斎場の外で傘を片手にしている取材陣の数はせいぜい20人ぐらいで、ものの10分もあれば撮影は終わるはずなのに、それは不可能になった。
■写真と映像は独占に
その代わりというかテレビディレクターのスーさんの撮影は認められていたので、結局、映像は彼の独占となったのだから、取材現場というのは何が起こるか分からない。