NHK前田会長の改革に決定的に欠けている「公共メディア」とは何かという議論
NHKの新経営陣が発表された。女性3人が理事に入り、放送のトップを務めるメディア総局長に林理恵理事が就任。当然、この人事を歓迎する声は多い。過去になかったことで、高い評価は当然だろう。
しかし正直言うと、前田会長らしい人事というのが印象だ。40代職員の局長への抜擢や縦割りを排す人事、関連会社への天下り禁止など、前田会長はNHKという組織を多くの点で変えている。それを評価する人はNHK内部にもいる。私も悪いことだとは思っていない。しかし前田会長の改革に決定的に欠けている点がある。それは前田会長が会見などで力説する「公共メディア」とは何かといった点についての議論が見えてこないことだ。
この「公共メディア」は過去には「公共放送」と表現され、それがNHKの存在意義として強調されてきた。それは国営放送ではなく民放でもなく、政府からも企業からも独立した中立、公平な放送機関という説明を人々に周知する役割を担ってきた。
ちなみに、林理事が就任したメディア総局長は、以前は放送総局長といった。公共メディアと呼ぼうが、公共放送と呼ぼうが、その公共性とは何かという議論が見えてこないので、「前田改革」の評価は定まらない。