その昔、吉田拓郎の自宅を張り込んでいると…「警察かと思った」とホッとされ
日が暮れようとする頃、吉田がひとりで自宅から出てきて、明らかにこちらに向かってきた。僕が慌てて車を出て彼の前に立つと、「何か用ですか?」と尋ねてきた。
テレビ局名と番組名を名乗り、正直に「森下愛子さんが来るんじゃないかと待っていた」と告げると、吉田は笑い出し、「な~んだ。いや、警察が張り込んでるのかと思った。何でだ? と思って」と答えた。続けて「彼女はきょうは来ないよ。結婚とか何か決まったら、ちゃんと話をするから。心配しなくていいよ」と非常に気さくに語りかけてくれたのだ。
立ち話だったが、好印象だった。僕も調子に乗って「真っ先に教えて」と名刺を渡したが、もちろん結婚発表は各社に公平なものだった。
吉田の名前を耳にして、そんな昔の記憶を鮮やかに思い出した。吉田は自身の音楽活動を絶えることなく続けてきたが、他にレコード会社の経営経験もあり、さまざまな歌手に楽曲提供もしてヒット曲も多く存在する。「ペニーレインでバーボン」の歌詞に、〈陽気に生きていく事が 何んだかみっともなくもなるよね〉という一節がある。今も同じ気持ちだろうか……。自身の健康問題も何度も乗り越えているのだから、その才能を生かしつつ自分のペースで、新たな名曲をもっともっと生み出してほしい。