<99>何もすることがなくなる「乗って3駅目」にすごくいい顔になるんだよ
NYの地下鉄で同じようなことをやっているヤツがいた
顔を1年ぐらい撮ってて、これを本にしようって、地下鉄の、サブウェイポートレートってやろうと思ったら、オレより10年前に、ウォーカー・エヴァンスってヤツがオレのマネしてやってたんだよね。ニューヨークの地下鉄でまったく同じようなことをやってたんだ。
それを知って、当時は写真集を出せなかった。マネしたと思われるとカッコ悪いだろ(エヴァンスは1938年から41年にかけてNYの地下鉄に乗車する人々をコートにカメラを隠して撮影。1966年に『MANY ARE CALLED』というタイトルで出版された)。
まあ、そういう発見って、たいてい同じことを考えてる人が世界のどこかにいるもんだな。40年後に出したのが、『SUBWAY LOVE』なんだよ。
その頃、地下鉄にすべて、人生っていうかさ、ポートレートっていうかさ、写真のことが全部出てると思ったんだよ。たまたま自分の前に座った人との偶然の出会いとかも、おもしろくてさ。地下鉄の前に座った人の顔に、人生がいちばん出てるんだよね。
(構成=内田真由美)