アマチュア無線とオーディオ好きな理系学生が、大学をやめて落語家になったワケ
柳家小ゑんは武蔵工業大学(現・東京都市大学)工学部中退という、落語界では珍しい理工系出身である。新作落語と古典、二刀流を使い、1年前に亡くなった三遊亭円丈が主宰する<実験落語の会>のメンバーでもあった。
今回は自身の落語家人生だけでなく、円丈の思い出話も語ってもらった。まずは落語家になったいきさつから伺おう。
「実家が西小山(品川区)の電気屋でして、アマチュア無線とオーディオが好きな高校生でした。家業を手伝っていたし、レコーディングミキサー志望だったので、電子通信工学科を選んだわけです」
それがどうして落語家になったのか。
「落語は祖父の影響で、好きになりました。祖父の部屋で演芸番組を見たり、落語全集を読んでた。ルビが振ってあるので子供にも読めるんです。大学に入って、オープンリールで落語とジャズのテープを聴いてると、重ねて録音したことで、志ん生の落語のバックにマイルス・デイビスのトランペットが聞こえてくることがある。これはシュールだなあって(笑)。そのうち落語に傾倒していって、大学をやめて落語家になろうと。なるなら、昔ながらの修業ができる師匠がいいと思って、一番好きだった小さん師匠の門をたたきました」