山田勝仁演劇ジャーナリスト
「喜劇 老後の資金がありません」で光る 小劇場育ちの俳優たちのパワフルかつ緻密な演技
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追い打ちをかけるように、夫の会社が倒産し退職金ゼロ。篤子も雇い止め。志々子との売り言葉に買い言葉で芳子を引き取ることに。重なる不幸に息も絶え絶えの篤子。
そんなある日、サツキの姑が認知症で失踪。年金調査員をごまかすために、一計を案じ、芳子を身代わりにしようとするのだが……。
渡辺えりと室井滋コンビは息もピッタリで歌と踊りもパワフル。羽場、宇梶、明星という小劇場育ちの俳優をメインキャストに配したことで、得てして大味になりがちな商業演劇が緻密な人間喜劇となった。
緊張感をはらみながらも娯楽作としての充実ぶりは脚色・演出のマギーの手腕に負うところが大きい。篤子を振り回すベテランの長谷川がチャーミングな演技で客席を沸かせた。
ただ、「老後の資金より大切なものは何か」という底流のテーマには深く共感するが、政治の無策とは切り離して考えたい。
新橋演舞場で19日まで。 ★★★
