広末涼子、市川猿之助、ジャニーズ…週刊文春の“独壇場”の危うさを考えてみた
週刊文春の1強時代は危うい──。「広末涼子のダブル不倫報道」を見ていて、そう考えた。
広末と料理人の不倫を報じた次の号で文春は、2人が密に交わしていた「交換日記」を手に入れて公開した。そこには2人の寝屋をのぞいているような気にさせられるキワドイ表現のものがいくつもある。
私はフライデーや週刊現代をやってきたから、不倫を報じることは週刊誌の役割の一つだと考えている。だが、交換日記のような「私信」を公開することには慎重であるべきだ。
確かに、かつて文春(2012年6月21日号)は、「小沢一郎 妻からの『離縁状』」というスクープを報じたことがあった。
小沢の妻が選挙区の有力者に出した私信を、ノンフィクションライターの松田賢弥が苦心の末に入手したものだ。
時の新谷学編集長は、その私信の全文を誌面で公開した。これは、小沢という公人の妻が、いかに亭主が政治家としての資質に欠けているかを訴え、離婚すると決断したという内容のものだから、公共性、公益性は十分にあったと考える。
しかし、今回の交換日記公開は、読者ののぞき趣味には応えられたかもしれないが、プライバシー侵害の恐れなしとはしない。
文春への疑問は市川猿之助心中事件の記事にもあった。猿之助と両親が死を決意する夜の描写である。午後8時、親子3人は猿之助が振る舞ったそばを黙々と口に運んだという。
「『週刊誌にあることないこと書かれ、もう駄目だ。すべてが虚しくなった。全員で死のう。生きる意味がない。寝ている間に死ぬのが一番楽だろう』
家には、猿之助が病院で処方してもらった睡眠導入剤が多くたまっている。猿之助は自室にある薬箱から大量にそれを持ち出すと、パッケージから錠剤を取り出す。時計の針は深夜〇時を指していた。両親はそれぞれ十錠ほどを口に含むと、間もなく意識を失った。猿之助は部屋にあったビニール袋を手に取り、その顔に被せていく。そして、四十七年間の歳月をともに過ごした両親にそれぞれ別れをつげた」
両親が動かなくなった後、猿之助はビニール袋を取り外し、“死に顔”を見た。そして、薬のパッケージとビニール袋を夜中のうちに家の近くのゴミ置き場に捨てたというのだ。
講釈師は見てきたような嘘を言うが、文春が得意とするのは調査報道であるはずだ。現時点では、この薬で死ぬためには1万錠も飲む必要があると報じられている。文春はこの描写をどう考えているのか知りたいものである。