ギタリストCharさんは小学生で「品川の質屋で買ったフォークギターにエレキの弦を張って弾いた」
TOTOのギタリストにフレーズをパクられ「これでやれる!」
そしてここからがクラプトンの話です。兄貴はクラプトンがヤードバーズを経て、クリームに入った時に聴いていたわけです。ベンチャーズのテケテケテケとは全然違ってましたね。聴いたのはヤードバーズで唯一ヒットした「For Your Love」のB面に入っていた「Got to Hurry」というブルース。兄貴が3人でバンドを組んでいて、なぜかB面の曲ばかり聴いて、雨戸を閉め切って練習していた。
小学生の僕も兄貴たちがやっているのを見て耳で聴いて、チョーキング、ビブラート、2つの弦をいっぺんに弾くとか、あとブルーノートっていう法則があることがわかった。それをやればブルースっぽくなるということも。それはクラシックギターには絶対にない世界。そして初めて「Got to Hurry」でブルースのフレーズを覚えました。
衝撃だったのはクリームの音楽です。有名なブルース「Crossroads」は耳コピし、中学時代の3年間を費やして完璧に覚えました。中学時代はバスケもやっていたので、バスケをやっているかギターを弾いているかしかない青春でした。エレキの弦を張ったアコギを弾いて、完コピしたことが僕のギタリストとしてのベーシックになりました。まさに人生のクロスロード、交差点です。
その後、先輩に紹介される時も「Crossroads」を弾けるのは大きかった。「コイツさあ、『Crossroads』を全部弾けるんだよ」と紹介された。すると「マジッ!?」と言われるわけ。でも、弾いたら「本当だ、スッゲー!」みたいな。
10代からデビュー前の5年くらいは人のレコーディングにスタジオミュージシャンとして呼ばれたり、ツアーのバックでギタリストをやったりしていました。転機はある時、あるアーティストがロサンゼルスでレコーディングするから、デモテープを作ってくれないかと頼まれたこと。実際は使わないけど、向こうでこんな感じと伝えるためのものです。
ところが、出来上がりを聴いたら僕のフレーズがパクられていた。「メチャ、Charっぽくない!?」と言われ、「確かに、本当だ」と。向こうでは名うてのスタジオミュージシャンが弾いているはずなのに。それまではパクることはあってもパクられたことなんてなかったからね。当時は日本の有名なアーティストといえば、小澤征爾先生くらいの時代。それでこの世界でやれると思ったというか。僕にとっては世界が変わった瞬間でした。デビューする1年前だったかな。
その後、その曲を弾いた人とは友だちになるんだけど。スティーブ・ルカサー、TOTOのギタリストです。
クラプトンには日本で1回だけ会ったことがあります。クラプトンはクロスロード財団(※1)をつくって毎年のようにチャリティーをやっています。彼が使ってきたギターをオークションに出してその資金にしてたりしているのですが、日本の有名なイベンターが何本か購入して、そのギターを使ったチャリティーコンサートをやったことがあるんです。
その売り上げの目録をクラプトンがツアーで来日した時に渡すことになって、武道館の楽屋にプレゼンターと出かけたことがありました。ライブを見てから楽屋に行ったのですが、待っている間、「終わってすぐ来るわけないよね。俺は帰るから渡して」なんて言ってたら、すぐそばにクラプトンがいて(笑)。
そういえばさっき、そこにいた人じゃん、どこにでもいるおじさんのような人……それが衝撃的というか、不思議というか。本当にオーラがない人だと思いました(笑)。
気がついて「あなたのギターを使ってチャリティーを」と挨拶し、「お忙しいでしょうから」と帰ろうとしたら「写真、1枚いいよ」って。そこはやっぱり芸能人なんだと思いました(笑)。