「女帝」の濡れ場に挑んだ黛ジュン
<1983年4月>
ゴールデンウイーク初日の4月29日、話題の映画「女帝」(にっかつ)が封切られた。同映画は2つの意味で注目を集めていた。ひとつは三越事件の当事者・竹久みちをモデルにした映画だったこと。もうひとつはヒロインを演じた黛ジュン(当時34)がロマンポルノ初挑戦だったことだ。
黛は都内の中学を卒業後、ジャズ歌手として米軍キャンプを回っている時にスカウトされ、64年に本名の渡辺順子でデビューした。最初は鳴かず飛ばずだったが、事務所を変わり、黛ジュンの名で再デビューを果たすとブレーク。67年「恋のハレルヤ」、68年「天使の誘惑」が立て続けにヒットし、一躍スターダムにのし上がった。
人気の秘密はパワフルな歌声ばかりではなかった。ミニスカートからのぞく美脚が世の男性たちをとりこにした。そんな彼女が一糸まとわぬ姿になるというのだ。往年のファンが大挙して映画館に押しかけた。
黛は初のロマンポルノ出演とは思えない、大胆な濡れ場を披露した。三越の取締役会で社長を解任されて「なぜだ!」と叫んだ岡田茂を演じたのは大木実。この大御所を相手に黛は妖艶な演技を見せた。大木の上に乗り、汗で光る体を反り返らせ恍惚(こうこつ)にふけるのだ。