井筒和幸×奥山和由ガチンコ対談 令和の映画に希望はあるか
■キスNGに「やめちまえ!」(井筒)
――どうすれば昭和のような熱い映画が作れるのでしょうか。
井筒 そりゃ、女優が乳だして丸裸になりゃいいんだよ。今は誰も脱がないだろ。あえて名前は言わないけど、キスも嫌とか言うたヤツおったからね。「やめちまえ!」と怒鳴りつけたよ。
奥山 アイドルじゃなくて?
井筒 女優よ。昔、若松(孝二=映画監督)さんが言ってたけど、最初に女優に「丸裸になれんのか?」って聞いてダメと言われたらすぐ帰るんだって。井筒、おまえわかってんのか、CMがあるからとかプロダクションのやつらにガタガタ言わせてるんじゃねえぞ、ってね。
奥山 その意味では、去年、僕が手掛けた「銃」(18年)に出てくれた日南響子なんか、堂々と全裸をさらしてすごく良かったですよ。
井筒 黒木瞳なんかも若いころから映画で、ちっさい乳首出してた。ああいう子がホンマの女優なんですよ。乳ぐらい見せたってどうってことない。色悪かったら修正したらええねん。役者なんて男も女も見せ物なんだから。
■「ゴルフをやるプロデュ―サーが増えた頃からおかしくなったよね」(奥山)
――節目になったのはどのあたりでしょうか。
奥山 平成の初期から中期のメガヒット「踊る大捜査線 THE MOVIE」(98年)だろうね。
井筒 それは言える。
奥山 良い悪いは別として、テレビドラマ発の無難な警察コメディーが興収100億円を超えた。その後、シネコン普及の影響もあって、コンプライアンスだなんだでうるさく言われるようになり、過激なヤクザ映画とかやりにくくなった。
井筒 ヒット作を作るのがテレビ局のプロデューサーばかりになったな。彼らはサラリーマンだよ。踊ろうが踊るまいが、儲けのことばっかりで映画の中身なんて関係ない。
奥山 目標の数字から逆算しながら映画を作ってるからね。サラリーマンといえば、その頃からゴルフをやるプロデューサーが増えたんですよ。僕たちの頃はあんなもんに何でわざわざ一日かけてって誰もやらなかった。いまはほとんどがやってる。
井筒 あと、いまの若い映画屋は「ゴッドファーザー」すら見てない。「仁義なき戦い」シリーズのことさえ何にも知らない。
奥山 そう、深作欣二って言っても誰も反応しないんだからショックです。観客の方も教育しないとシネコンが映画の全てだと思い込んじゃってる。あと実録ものも減ってるね。実在の事件ネタは面倒くさい、ヤバそうだって周りに言われるけど、そこで企画をゴリ押しせずに、止められる人がいま生き延びられるプロデューサー。
井筒 そんなんばっかやで。