<7>「貸金ファイル」には数万人分の人生の縮図が記録されていた
野崎幸助さんの会社「アプリコ」のオフィスは、自宅からほど近い4階建ての自社ビル「ピロポ ビル」の1階にあった。住宅地図にも、その名前で載っている。ピロポとはスペイン語で男性が女性に声を掛ける行為とされているが、ナンパみたいなものだろうか。
「ハッピーオーラ、ハッピーエレガント。私とHしませんか?」
これがドン・ファンのナンパのセリフである。誰彼となくこのフレーズを使うのであるから、脇にいた私は赤面したものである。
もっともドン・ファンにとってピロポとは、銀座にある高級クラブのことである。高級クラブ好きのドン・ファンは、銀座でも若いべっぴんホステスさんがいることでも有名な老舗「ピロポ」が好きだったようだ。私は一緒に行ったことはないが、ピロポには何度も行ったことがあるので知っている。誤解がないように釈明するが、私が高級クラブに行っていたのはあくまでも仕事である。ホステスさんと芸能人やスポーツ選手がお付き合いをしている裏を取るためであって、個人で遊ぶためではないし、そんなお金もない。
田辺市内に幾つかの賃貸マンションを所有していたドン・ファンはマンションにも「ピロポⅠ」「ピロポⅡ」と名前を付けていたから笑ってしまう。まさか紀州にそんな名前のマンションや建物があるとは、ピロポの関係者も想像していなかったろう。