<7>「貸金ファイル」には数万人分の人生の縮図が記録されていた
■防犯カメラで社員もチェック
オフィスの窓際にはスチール製の机が並び、パソコンが置かれている。壁際にはスチール製の書庫が置かれ、貸金業時代に貸し付けた相手のファイルがズラリと並んでいる。2階にもファイルが並んだ部屋が2つ。合計すると数万人分の資料になると聞いていた。
「ほら。こんな人にも貸していたんだから」
社長が私に差し出したファイルを目にして驚いた。某県にある裁判所の裁判長ではないか。それからは、まるで図書館で本を選ぶように、暇なときにはファイルを手にして記録を見るのが私の日課になった。
貸金業の記帳は法律で義務付けられており、保管することも義務であるが、アプリコはより細かく記録を残してある。誰が何のために借りることになったか、誰が完済してからもまた借りに来たかなど、人生の縮図を見ているような世界がファイルには詰まっていた。
1階には社内を映すために24時間作動している防犯カメラが5台あった。建物の外にも設置されていて貸金業の危険性、ものものしさを感じることができる。3階には、これらを見られるモニタールームがあり、私も何度か見る機会があった。社長は従業員に不審な動きがないかをチェックすることも怠らなかった。(つづく)