<8>朝のルーティンワークは自動販売機の小銭回収…ドン・ファンの生きがいだった
野崎幸助さんの会社「アプリコ」のオフィスには社長室があり、奥に腰ぐらいの高さの金庫が置かれていた。鍵はドン・ファンと経理担当の佐山さんが所有していた。
社長室といっても3畳ほどのスペースが仕切ってあるだけで、ドン・ファンは、そこに置かれているスチール机で帳簿類に目を通したり、印鑑を押したりしていた。
会社の印鑑と印鑑証明書は、だれもが自由に使えるようにデスクの箱の中に入っていた。アプリコは貸金業をやめて許可証も返上しているが、短期の貸し付けは行っていたようだ。そのため従業員が公正証書などの書類を作成しやすいようにしていたのである。
2、3、4階はバス・トイレ付きのワンルームマンションになっていた。かつてはそこに従業員が住んでいたこともあったらしいが、10年ぐらい前からは誰も住んでいない。長らくメンテナンスをしていないのでカビが生えていたり、畳が擦り切れていたりして、とても泊まることができないような汚さだった。そのため金庫部屋やモニタールーム、従業員の休憩部屋などとして使われていた。