<11>ドン・ファンのラクダのシャツとももひき姿はワイドショーを喜ばせた
「いろいろな社が来たんですけど、誰が誰なのか分かりませんでした。同じテレビ局でも番組が異なると関係がないみたいで」
ドン・ファンはテレビ業界のことに疎く、テレビの威力についても無知だった。ワイドショーも見ないので、リポーターの顔も名前も知らなかった。
「少し待ってくださいね。着替えますから」
「いや、いや。そんなにお手間は取らせませんから、大丈夫です」
テレビのクルーは着替えをしようとしたドン・ファンに親切そうに声を掛けた。それを真に受けた彼は、寝室でラクダのシャツとももひき姿で対応したのだ。
「こんなにおいしい絵面はないからな」
ワイドショーのスタッフたちは心の中でそう思っていたに違いない。後から駆けつけたワイドショーのスタッフはスーツ姿の彼を目にして、「いつものようなラクダのシャツに着替えてくれませんか」と懇願したというから噴飯ものであろう。
「なんでラクダのももひきを撮らなかったんだ」