<11>ドン・ファンのラクダのシャツとももひき姿はワイドショーを喜ばせた
番組のプロデューサーから雷が落ちることが予想されたからだ。
しかし、後発組はラクダのシャツ姿を撮れなかった。実際、スーツ姿のドン・ファンが寝室でテレビカメラに向かって説明している番組もあった。
■プランは通らず…
この事件を知った私も、すぐに取材に行きたかった。ところがこんなに面白い事件なのにプランが通らなかったので、初動に失敗してしまったのだ。週刊誌や月刊誌ではプランが通らなければ独自に動くことはご法度であり、もし動いたとしてもギャランティーは発生しない。交通費なども自腹である。
紙媒体で事件を報じたのは週刊文春だけであったが、その扱いは信じられないほど小さかった。いくつかの記事をまとめて紹介するワイドコーナーの一本で、スペースも半ページほど。その内容は、ドン・ファンが貸金業で財を成したことや田辺で嫌われていたことなど、ネガティブな論調に終始した。
私が……いや世間の皆さまが知りたいのはドン・ファンの生きざまと女性遍歴である。そう確信した私は、まだまだ取材の余地があるはずだと内心胸をなで下ろしていた。もし、週刊文春がその時にこのような視点で記事を作っていれば私の出る幕はなく、したがって「紀州のドン・ファン」が生まれることもなかった。(つづく)