張り込み現場では一般社会では見えにくい「闇の穴」が顔をのぞかせる
「薬局は大繁盛みたいだな」との暴力団関係者のコメントが一部で報じられた。「薬局」とは覚醒剤などの密売などをシノギとする組織の隠語だそうで、闇営業のバーやクラブ周辺の路上で客と直接取引しているのだという。すっかり人けが少なくなった繁華街の路地裏に張り込む。よく知ったタレントの車がやってくるとの情報である。足元のおぼつかない男女の姿もあるが、かつてディスコで踊っていた若者たちのように、笑顔で取材に応じるとは限らない。
「来たか」
「ええ」
黒いジャージー姿の男がスマホ片手にうろついて、電信柱にもたれたり、ガードレールに腰かけたりしている。明らかに誰かを待っている様子だ。通りの向かい側からカメラを構え、いつでも対応できる態勢は整えた。
と、そこで男が一瞬、顔をあげて、こちらを見た。すぐにうつむいたが、中年記者は見逃さない。男はこちらに歩み寄ってくるわけでもないが、空気がかわった。
歩き去るそぶりも見せないのは、仲間を呼んだ可能性がある。