張り込み現場では一般社会では見えにくい「闇の穴」が顔をのぞかせる

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「……出直すか」

 ちいさく言うと、自衛官上がりのカメラマンはすぐにカメラをおろした。

 揉め事になって、警察沙汰になるならまだましで、拉致されて東京湾に沈められるというヤクザ映画さながらの展開もないとはいえない。誰もいない繁華街の一角は、しんとして不気味だ。けんのんさがある。自分の身は自分で守らなければならない。張り込みの現場では、一般社会では見えにくい、そこここに開いた闇の穴が顔をのぞかせる。落ちたら真っ逆さまだ。そんな現場からは遠ざかるしかない。  =つづく

(取材・構成=長昭彦/日刊ゲンダイ)

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