耳<下>耳の不調を解消する1分間内耳エクササイズ 専門医が解説
「耳鳴り」「難聴」「めまい」などの耳のトラブルは、耳の病気によって引き起こされるものと、原因がよく分からないものがある。ただ、原因不明の場合でも耳の不調には、年齢、生活習慣、体質が深く関わっているので、ある程度は要因を推測することができる。
埼玉医科大学客員教授(耳鼻咽喉科)で、「川越耳科学クリニック」(埼玉県川越市)の坂田英明院長が言う。
「耳の不調を訴える患者さんに多い体質面の問題は、『代謝(体内で生じる化学反応とエネルギー変換)』の低下です。具体的には、お腹に内臓脂肪がたまる『メタボリックシンドローム(以下、メタボ)』や、水分代謝の低下による『むくみ』が、耳のトラブルに深く関わっています」
メタボは、過食や運動不足で肥満に陥り、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が重なり、血液がドロドロになっている状態。血液の流れが悪くなれば、「内耳」に供給される酸素や栄養が乏しくなり、耳鳴り・難聴・めまいが起こりやすくなる。
ちなみに内耳は、体の回転運動を感じる「三半規管」、体のバランス情報を脳に伝える「前庭」、音の振動を電気信号に変換し脳に伝える「蝸牛」から成る。
むくみがあれば、この内耳にも余分な水がたまりやすくなる。特に、回転性のめまいや耳鳴りなどを伴うメニエール病は、内耳のむくみが原因であることが指摘されている。
「とりわけ、メタボやむくみを招く要因は、体をあまり動かさないこと。つまり、一日中座りっぱなしの『不活発な生活』が根底にあります。WHO(世界保健機関)は、死に至る危険因子として高血圧、高血糖、喫煙とともに『身体不活動』を挙げています。それは全身の血流が悪化し、各臓器の働きが衰えるからで、内耳も同じです。ただ、不活発な生活は血流不足以外にも内耳に悪影響を及ぼします。体を動かさないでいると、『耳石』という器官が動かなくなるのです」
内耳の前庭では、有毛細胞の上に炭酸カルシウムの結晶である耳石が層をなしてのっている。頭や体が傾くと耳石が動いて有毛細胞を刺激し、その情報が大脳に伝わり、自分の頭がどこを向いて、どのように動いているかを感じ取っている。
しかし、不活発な生活を続けていると耳石があまり動かなくなり、有毛細胞に刺激が伝わりにくくなる。すると、音の振動を脳に伝える有毛細胞が衰えて耳の不調が起こりやすくなるのだ。