著者のコラム一覧
田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

慶応幼稚舎はよく落第する? 背景には「内部」のプライドと「外部」に対する劣等感が

公開日: 更新日:

 慶応幼稚舎にまつわるトリビアに「幼稚舎生はよく落第する」というのがある。幼稚舎から中学(普通部、中等部)や高校(塾高ほか)に上がってくる生徒はやたら留年が多いというのだ。「確かに僕らの時代はけっこういた」と話すのは幼稚舎出身の慶応大元教授だ。

「中学受験や高校受験で入ってくる連中は勉強ができるんです。6年間を伸び伸びとすごしてきた幼稚舎生は学力の差を見せつけられ、すっかりやる気をなくす者が少なからずいた。そういう生徒を学校側は容赦なく落第にするんです」

 中学に上がった幼稚舎出身の生徒同士は自分たちのことを「内部」と呼ぶ。そして、新たに入学してきた生徒を陰で「外部」と呼んで区別するのだ。そこには自分たちこそが慶応を体現しているという誇りが垣間見える。

「誕生会なども幼稚舎生だけで集まるケースが多かった。そうしたバリアーを張るのは決して褒められたことではないのですが、プライドとは裏腹に、外部に対する劣等感のようなものがどこかにあったのだと思う」(同)

■ TBS福澤克雄氏は高校で落第を経験

 コンプレックスを植えつけられ、不本意に落第してしまうケースが後を絶たなかったという。中には2年続けて留年して「おっぽり」(おっ放り出す=退学)になる者も。「半沢直樹」や「下町ロケット」を手がけ、今ドラマで一番視聴率がとれる演出家と評される幼稚舎出身の福澤克雄氏も塾高1年の時、留年している。

「彼の場合は幼稚舎時代から続けていたラグビーが原因でしょう。当時のラグビー部は猛練習で知られ、勉強するヒマなどなかった。落第する部員が続出していたんです」とラグビー部OBは振り返る。

 オールドラグビーファンにとっては福澤克雄氏という名前よりも「山越克雄」のほうが馴染みがあるだろう。189センチ、95キロの「山越」は慶応大ラグビー部でロックを務め、86年1月15日、トヨタ自動車を破り、日本選手権初優勝を果たしている。

 名字がなぜ変わったかといえば、両親が離婚し、母の姓を名乗るようになったからだ。母・和子さんは慶応の創設者・福澤諭吉のひ孫である。つまり、克雄氏は諭吉の玄孫に当たる。和子さんの弟で三菱地所の社長や会長を歴任した福澤武氏も幼稚舎の出身。慶応の最高意思決定機関である評議員会の議長も務めた。

「克雄氏は慶応においていわばこれ以上のない血筋。その彼が落第した時は学内でちょっとした話題になりました。学校からすれば、そうした人物さえも特別扱いしないという姿勢が示せたわけですが」(塾高関係者)

 とはいえ、たくさんの落第を出していたのは過去の話。「留年する生徒は以前よりずいぶん減った」とこの関係者は話すが、そうなるのは幼稚舎出身者が多いという点だけは変わっていないようだ。



◆田中幾太郎の著書「名門校の真実」」(1540円)日刊現代から好評発売中!

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