川崎「元祖立ち飲み屋」店長の矜持、「飲み物は水でいい」という若い客を帰した
第25回 川崎②
アタシたちが繰り出していた頃の川崎は「ミスタウン」と呼ばれ、映画館を中心とした繁華街が賑わっていた。
久々に川崎を歩いたことを88歳になる母親に話したところたいそう懐かしがり、30年前に他界した父親が「結婚したての頃に、よく仕事仲間と繰り出していた」という。どうやら300人ものホステスを抱えていたというシアターキャバレー「グランドオスカー」に通っていたようだ。高度経済成長突入期、昭和30年代半ばのことである。
「変なところばかり似るわね」と母。トホホ。ま、血は争えないってことだ。
そのミスタウンが「チネチッタ」になったのが昭和62年。シネコンの先駆けだ。こけら落としはフェリーニの「インテルビスタ」。この頃から川崎の大規模再開発がスタートする。
「元祖立ち飲み屋」の創業は1970年。駅前の再開発で移転を余儀なくされ、現在の場所に落ち着いた。今回はこちらの店に腰を据えるとしよう。まずはホッピーの白(490円)とマグロ(270円)とポテトサラダ(290円=写真右)からスタート。このポテサラはいぶりがっこをまぜ込んであって歯ごたえがいい。
気になっていたきつね煮(220円)も注文。大ぶりの油揚げに牛肉などの具材をたっぷり入れて出汁で炊いた逸品。タプタプのあっさり出汁がいい。うまい!