新年度入りで始める「エンディングノート」いまどきの書き方 “書いておくべき項目”一覧表付き
新年度がスタートした。健康維持のためのウオーキングや老後を充実させるための趣味、リスキリング(学び直し)など新しいことを始めたいと思っているシニア層は大勢いる。終活に踏み出すのもいい機会かもしれない。手始めにエンディングノートを書いてみてはどうだろう。
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40代男性がポツリとつぶやく。
「1人暮らしをしていたおじさんが急死してしまって……。生前から、死後のことをいろいろ相談されてはいたんですが、いざ亡くなると手続きが大変過ぎていろいろなものが滞ったままです。もうすぐ1年ですが、預貯金なども手付かずで困っています。親戚は甥の私だけなので、すべてをやらなくてはなりません。ただ、名字も違うし、多くのことが進みません」
どこの銀行を使っていたのか、保険はどうなっているか。クレジットカードや携帯電話の解約、サプリメントの定期購入……。数え上げたらキリがないほど、やるべき手続きは山積みだ。
「せめて、銀行口座の番号や、亡くなったあとに知らせてほしい知人らをきちんと教えておいてほしかった」(前出の40代男性)
数年前から「エンディングノート」を書く人が増えてきた。自分でノートを買って必要な項目を書いていってもいいが、いまは書店にたくさん「エンディングノート」は並べられている。出版元によって若干の違いはあるにせよ「書いておくべきこと」はそれほど違わない。後に残された人のためにも、しっかり書き残しておきたい。
■お金(財産)情報が最も大切
「生前整理に役立つノート」(ワン・パブリッシング)の監修を務める行政書士キートス法務事務所の汲田健代表は言う。
「書いておくべきは死後のことです。亡くなったあとだけでなく、認知症や意識不明になった場合も、本人は口を出せなくなります。エンディングノートを書き、誰かに託す。書き始めてみると、いろいろなことが整理できます。まずはお金、財産関連をまとめておきましょう」
お金情報は最も大切だ。金融機関名や支店名、口座番号などに加え、キャッシュカードの暗証番号も残しておきたい。ただし、暗証番号やパスワードなどは口座名の書いてあるノートとは別に保管したほうがいい。
電気やガス、水道、固定電話、携帯電話、新聞購読、保険料、NHK、クレジットカードなど銀行口座から自動引き落とし(口座自動振替)にしている項目もピックアップする必要がある。
それぞれ銀行名、口座名、自分の顧客番号、引き落とし日も忘れずに。
「2、3年前から自転車保険に入っていますが、年に1回の自動引き落としにしています。毎月ではなく、年に1回という契約は忘れがちです。しっかり書いておきたいと思います」(80代女性)
出ていくお金だけでなく「入ってくるお金」もチェックしたい。公的年金の基礎年金番号や受取口座、私的年金があれば、その情報も書いておく。株を保有していたら配当金を受け取る金融機関などを記す。
「どんな生命保険に加入しているか、加入していたかを整理するのは大事です。90歳近くの父親が亡くなり、いくつかの生命保険が下りたのですが、全く覚えのない生命保険もあったんです。300万円ほどでした。たまたま分かったからよかったのですが、知らないままだったらどうなっていたか」(50代女性)
加入者本人が失念しているケースもある。エンディングノートを書くことで、いま一度、保険証書などを引っ張り出し、自分の加入保険を思い出してみるのもいい。
「妻に内緒で10年以上にわたり純金積み立てをしています。月々1万円ほどなので大した金額ではありませんが、申し込みから残高参照まで、すべてネットで完結しています。取引に関する郵便物はほぼ届かないし、もし自分が急死したらどうなるのか不安です。私の銀行口座から毎月引き落とされるので、純金積み立てをしていたのは分かるでしょうが、顧客番号や取引パスワードが分からないと苦労するはずです。エンディングノートに書いておこうかと思います」(50代男性)
不動産やクレジットカード情報、SuicaやPASMOなどの電子マネー、ペイペイといったスマホ決済系も重要だ。
「まだそれほど問題になっていませんが、ペイペイの残高や各種ポイントなど本人が亡くなったあと処理をどうすべきか。迷う人はたくさん出てくると思います。現状は個別の対応でしょうが、手続きが煩雑なのは確かです」(汲田健氏)