(21)「尊敬してくれ」などとは申しませんが…悪ふざけや無理難題はご勘弁を!
ある日のこと。街を流していると、手を上げる若い男がいた。同じ年頃の男も一緒だ。私がクルマを止め、ドアを開けた。するとクルマに乗り込むこともなく、なにか言っている。私が戸惑っていると「運ちゃん、いま何時?」と叫んですぐに笑いながら走り去っていった。
乗車する気などサラサラなく、ただの悪ふざけだ。若いといっても間違いなく成人。小学生が他人の家のチャイムを押して一目散に逃げ、出てきた住人がけげんな顔をするのを物陰から見て喜んでいるのと同じレベル。
じつに幼稚な悪ふざけで腹も立たなかった。「そのうち世の中で痛い目に遭うからね」と思ったものだ。だが、こんな悪ふざけもタクシードライバーという職業をナメているからなのだろうとも思った。「パトカー相手に同じことをやってみな」と言いたくなった。
■酔客の無茶ぶりも…
また別の日の夜。「谷根千」と呼ばれる東京の「谷中、根津、千駄木」エリアを流していたときのこと。不忍通りで数人の男性たちが手を上げていた。クルマを止め助手席そして後部席のドアを開けると、助手席に1人、後部席に1人、2人、3人、そして最後は女性が乗り込もうとしてきた。酒席で盛り上がった後のようだ。