王子「山田屋」の古い酒燗器で燗した日本酒が間違いなくうまいワケ
串カツと日本酒は相性がいい
周りを見れば、数組の先輩方が山田屋自慢の新潟の地酒を楽しんでいる。初代創業者が新潟に疎開していた縁で、地酒を仕入れるようになったという。地酒の冷やもいいが、ここでは辛口の燗も忘れてはならない。というのも今ではほとんど使われていない古い酒燗器(写真右)があるからだ。これで燗した酒は間違いなくうまい。
「気のせいじゃないですよね?」
5代目に聞くと、「中にガスで熱くした湯が入っていて、その中のらせん状の細い管に酒を流し込むとちょうどいいぬる燗になって出てくるんです。外気に触れずにアルコールが飛ばない。だからうまいんですよ」。
なるほど。じゃ、ぬる燗1合(350円)と串カツ(300円=同左)。串カツと日本酒は相性がいい。長ネギ入りの関東風がいいね。まずはぬる燗をぐびり。うん。間違いなくうまい。で、串カツを肉ネギもろともバクリ。これもサイコ~。次は少し熱めを頼むことに。するとかわいいお姉さんが一合徳利の酒を2回、酒燗器にくぐらせた。なるほど。ぐい飲みにつがれたお酒からはほのかに湯気が立ち、口を寄せても湯気でむせることもなくちょうどいい熱さ。うまいなあ。
こうなったら必殺のホタルイカの沖漬け(500円)だ。酒との相性は最強。永久に飲んでいられそう。外が暗くなるにつれて店内が賑わう。アタシはこのザワツキ感が大好きだ。飲み方を知っている酒飲みたちの場をわきまえた話し声が何とも言えない。見上げると黒板に今日のおすすめが書かれている。天然真鯛のウニ和え、山菜天、菜の花おひたしなど強者ぞろいだ。いかん! このままではボコボコにされ、遠征先からの生還は厳しいぞ。未練はあるが、歩けるうちに帰るとしよう。覚えてろ! 今度は容赦しないからな!
(藤井優)
○山田屋 北区王子1-19-6