「千束いせや」の天丼のうまさと店の人たちの情に涙腺が緩んだもうひとつの理由
先週、今話題の吉原を歩いたときのことだ。
国際通りからせんわ通りに入り、たこ焼きを買ってから吉原神社に参拝に行った。
が、多くの人でごった返している。休日ということもあるが、ここで初詣以外にこれほどの参拝客を見たのは初めてだ。アタシは参拝をあきらめ、吉原大門方面へと向かった。
すると見返り柳で数人の観光客が写真を撮っている。さらに土手通りから路地に入ると、驚いたことに和風の建物で有名な老舗ソープKの前で、旗を持った観光ガイドが20人ほどの女性観光客を相手に説明しているではないか。極めつきは吉原には不似合いな女子たち。彼女たちはスマホでソープの写真を撮っていたのだ。ドラマというより主人公役の俳優のファンなのかどうか。聖地巡礼もこうなると考えものです。
そんなことを思いながら、ちょうど腹もへってきたので今日の目的店へと踵を返した。今回はてんぷらの老舗「千束いせや」だ。
明治22年に創業した土手の伊勢屋を3代目にあたる3兄弟のご長男が継ぎ、次男、三男の方がそれぞれ千束店と蔵前店を始めたということだ。
店に入ったとたん、香ばしいごま油の匂いにすきっ腹を刺激される。アタシは5、6人座れる正面カウンター右端に案内された。左側には4人掛けテーブルと10人ほどが座れる座敷がある。アタシは定番のランチ天丼(980円=写真上)と冷酒(480円)を注文した。
厨房では黙々とてんぷらを揚げる4代目の若林さんと大女将、そして5代目がてきぱき動いている。客の対応は5代目の若女将だ。家族で切り盛りしている。