警察による供述調書の捏造は令和でも続いている…決して「昭和の話」ではないのだ
内容虚偽の供述調書が捏造されると、実際には言っていない内容が、言っていることとして扱われ、それを前提とした裁判が進み、判決が下される可能性があります。実際の裁判でも、被告人がどんなに供述調書は虚偽だと主張しても、裁判所は「被告人の供述調書は信用できる」などと簡単に判断をして有罪判決を書きます。
この問題は取り調べの可視化(録音・録画)により大半が解決可能です。自白を取れば「落とした」として評価される警察官の認識を変えるのは簡単ではないですが、取り調べの現場での言動がすべて記録されていれば、不適切な行為はすべて白日の下にさらされます。
このような話をすると、弁護士は犯罪者の肩を持つ、巧妙な犯罪者を守っているなどと批判をされることがあります。確かにそういう側面はあるかもしれません。しかし、刑事裁判で求められることは、10人の真犯人を野に放つこととなっても、1人の無罪の者を誤って処罰してはならない、という原則です。死刑判決を受け、いつ処刑されるかわからないという精神的苦痛は想像を絶します。そのような状態に袴田さんは58年もの間置かれていたのです。警察官による自白強要は、このような1人の無罪の者を誤って処罰する結果をもたらす結果しか生みません。
読者の皆さんも、犯罪とは無縁だと思っていても、ある日突然、「痴漢だ」「詐欺だ」と疑いをかけられることはあり得ない話ではありません。供述調書の捏造が引き起こす問題について、私たちは決して他人事ではないのです。