サンコー 角谷太基社長(1)買う人・つくる人・売る人が幸せになる「三幸精神」
女手一つで、4人の子どもを育てることは、並大抵なことではなかったはずだ。母の姿を見ながら育った先代・勝司氏が、幼心に「母親を早く楽にしてやりたい」と思うのは、当たり前のことだった。
15歳で商売の道に飛び込んだ先代だったが、その道は平坦ではなかった。人見知りが激しく、いらっしゃいませも言えない。すれ違う友人たちは高校に進学し、制服を着て楽しそうに会話をしながら通学をしていて、引け目を感じていたという。
■「人の心に貯金せよ」
「弱音を吐く父を支えていたのが、祖母でした。祖母は父に『人の心に貯金せよ』とよく言ってたようです。人のためになったと思ってこそ、自分のためになる。人さまの心に貯金すると、いつかきっとあなたにもいいことがある。目には見えない無形の財産が生まれて心が豊かになる、祖母は、そういった思いを込めて『人の心に貯金せよ』と伝えていました」
そんな祖母は、陰ながら子どもたちを支えるために近所の農家の手伝いに出かけては、子どもたちの“貯金”になるように働きかけていたという。