損保大手の「政策保有株6.5兆円」売却表明はなぜ株価下落の要因にならない?
投資家の間でひそかに注目されてきた損保大手4社による「政策保有株」の売却。2月29日の発表から1カ月あまり経ったが、大きな混乱や反動はなさそうだ。
ご存じのように、損保4社が今後、売却整理する予定の政策保有株は延べ5900社、時価総額6.5兆円にものぼる。それだけに最初のニュースが流れたときは、好調な株式市場の暴落要因になるのではないかと心配されたものだ。しかし、売却発表当日の東京市場では日経平均が下落するなか、東京海上HDやSOMPOHDは、持ち合い解消を好感され逆行高。また、売却される側のトヨタ自動車や信越化学工業も買われ、その後も大きな下落が見られないから意外だった。これは、どう考えればいいのだろうか?
そもそも日本の株式市場の特徴である「株式持ち合い」の形成は、戦後の財閥解体後から始まり、1960年代の資本自由化のなかで、外資による企業買収から逃れるために強化・拡大されていった。また80年代後半のバブル期には、大量のエクイティーファイナンスの受け皿として株式持ち合いが活用された。
ところが、90年代のバブル崩壊後は、株式持ち合いのマイナス面や弊害が目立ち、当局の指導もあり、政策保有はどんどん解消されてきた歴史がある。野村資本市場研究所によれば、「持ち合い比率(時価総額ベース)」は、1991年の50%超から2023年には11%台まで低下している。