「緑茶王国」静岡の生き残り戦略…海外展開に明るい兆し、1本2万円超の高級ボトル茶も話題に

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生産量は2位鹿児島と拮抗も、栽培面積は圧倒

 さて、静岡は言わずと知れた緑茶王国。昨年の作物統計によると、荒茶生産量は2万7200トンで日本一。最近、生産量を伸ばしている鹿児島が2位で、その差は1100トンに迫っているが、茶王国の意地を見せた格好だ。3位三重県とは2万トン以上の開きがある。

 そんな茶王国の中で指折りの産地が牧之原市と島田市だ。両市の生産量(09年)はそれぞれ5770トン、5340トン。県内の2大産地としてシノギをけずっている。大井川流域と牧之原台地を含む立地が両地域の茶産地としての優位性だ。

 茶王国にあっても、担い手不足は深刻さを増している。県内の茶農家は1965年に6万8373戸あったが、20年には5827戸と9割減。島田、金谷、川根の3大産地を含む現・島田市の総農家数は、95年の4417戸から20年の2342戸へとほぼ半減だ。県内の栽培面積も減ってはいるものの、昨年は1万3300ヘクタールで全国の4割近くを占める。生産量で拮抗する鹿児島を、5000ヘクタールほど上回る。

■まるでワインボトル! 1本2万円のボトルティーのお味は?

 緑茶生産現場での後継者不足は深刻だが、海外展開においては明るい兆しが見える。緑茶輸出実績をみると23年の輸出額は292億円。47億円だった10年前と比べると、6倍以上だ。輸出量も右肩上がりで、21年は7579トンに上る。

 海外市場では、ボトル1本の価格が2万円を超える高級緑茶も話題になっている。記者も1万3000円の「KOUSHUN」を試飲したところ、うまみの強さに出汁か!と錯覚したほどだ。黒のボトルはまるでワインのそれで、茶葉をイメージさせるロゴマークも洗練されている。そのたたずまいにも驚かされた。

 そんなボトル茶の生産者は1957年創業のカネス製茶(島田市金谷地区)だ。4代目の小松元気氏によれば、「売り上げは前年比120%増が続く」と追い風が吹く。それにしても、これほど高価なのはなぜか。理由は大きく3つあるそうだ。

①市場に出回っていない、うまみが多い茶葉を独自に開発

②大井川上流で汲み上げて、さらにろ過した超軟水

③フィルターによる非加熱除菌と低温抽出

 この3つがブランド力を高める要因になっているという。

 お茶の3大成分は、カテキン=渋み、カフェイン=苦み、テアニン=うまみ(アミノ酸)だ。カテキンとカフェインは高温で抽出されるが、テアニンは低温抽出が可能。その抽出方法の違いに注目し、低温の水出しをすることで、苦みや渋みを抑えながら、うまみ優位のお茶になるというが、そうするとほとんど生に近い茶のうまみを引き出すことになる。高価なボトルティーは、緑茶のおいしさを追求した努力のたまものでもあるのだ。

「お茶を巡る環境は国内的には厳しいですが、海外では好意的に受け入れられて伸びています。一方、島田市には抹茶作りの技術がなく、リーフ(茶葉)の販路を拡大するしかありません。そんな現状を逆手に取って、うまみの多いお茶を飲んでもらうために生み出したのがボトリング提供のスタイルなのです」(小松氏)

 海外市場の開拓で特に力を入れるのは、うまみ文化が根づく国だという。

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