無名の染み抜き剤が70万本ヒット!なぜ宣伝費ゼロの広報戦略でも知名度アップできたのか
浅川ふみ社長(株式会社ハッシュ)=後編
ハッシュの浅川ふみさんは、幼少期から好奇心旺盛な子どもだった。
「小学校2、3年の頃から、木の実とか葉っぱとかを潰して、ジュース飲みな~とか言って友達に渡したりしてました。人がまだ知らないことを発見するのが好きだったんです」
この好奇心が、後のビジネスの原動力となる。浅川さんは、クリーニング業界の常識にとらわれず、新しい方法を追求し続けた。
「胃液を衣服の上で再現できないか。そう考え、酵素と酸を合わせる手法を思いつきました。酸と合わせるなんてとんでもない、非常識だって言われましたが、誰もやっていないからこそ独自のものができると信じて疑いませんでした」
浅川さんの成功の裏には、もう一つの重要な要素があった。それが広報戦略だ。
「姉が広報を担当してくれています。私が営業をやり、姉が広報をやる。この2本柱でやっていけば、もっと強くなれると確信しています」
身内が広報を担当することで、情報の一貫性が保たれ、長期的な戦略が立てやすくなったという。その成果は、テレビや雑誌での紹介につながり、新商品「ルーシーミスト」は発売と同時に5000個が売れるほどの人気を博した。
「広報は、プレスリリースを出して、それをメディアさんが見て、発信してくれる、そのサイクルだと思っています。自分でこれは落ちると言うよりも、雑誌やウェブ記事でこんなの使ってみました、よかったですって言われたほうが、どんどん知名度が上がっていくのです。これを戦略としてしっかりやっていくことが、広告予算の少ない中小企業には大切だと思います」
浅川さんは次なる挑戦として、環境に配慮した洗剤の開発に取り組んでいる。
「クリーニング業界は環境負荷が大きい。石油系の溶剤を使っていますからね。これからは天然素材を使った洗剤や、それを使って家庭でドライクリーニングができる機械の開発が必要だと考えています」
そのために、浅川さんは東京都の支援を受けながら、バイオエタノールを使用したクリーニング技術の確立を目指している。
「未来のクリーニング店は、家庭やコインランドリーでできない特殊なクリーニングを担う専門店になっていくでしょう。その中で、環境負荷を減らしつつ、高い技術力を持つ店舗が生き残っていくはずです」