日経新聞コラム「私の履歴書」で、伊藤忠の“ドン”岡藤正広会長の肝心なネタがスルーされた思惑
新年から1カ月間、日本経済新聞の名物コラム「私の履歴書」に掲載された伊藤忠商事の“ドン”、岡藤正広会長CEOが話題をさらった。高校3年で結核に侵され、医師から「命の方が大事」と大学受験を諦めるよう促されたこと、30代になってイヴ・サンローランはじめファッション業界の大物たちを次々と口説き、日本に持ち込んだこと。その矢先、41歳で緊急入院を余儀なくされ、「このまま会社員人生が終わりなのか」と悲観した日々など、人生の機微がつづられている。
しかし、「肝心なあのことが触れられていない」(大手商社幹部)と指摘されるテーマがある。岡藤氏が社長時代の2015年に6020億円を投資した中国中信集団(CITIC)との関係とその現在だ。
■当時の自己資本の4分の1に当たる巨額出資
伊藤忠は2014年にタイの華人系財閥であるチャロン・ポカパン(CP)グループと資本提携した。そのCPグループと組んで2015年に決めたのが中国の国有コングロマリットであるCITICへの1兆2040億円規模の資本出資だった。2社による折半出資ということで伊藤忠の負担額は6020億円。当時の伊藤忠の自己資本の4分の1に当たる巨額出資だった。