<第13回>恩師との初対面 そのやり方に抵抗があった
実際に参加してみると、雰囲気は悪くありませんでした。
「意外といい人かも……」
長久保先生の姿にはオーラがありましたが、恐怖感はすぐに消えました。しかし、それが錯覚だとわかるのには時間はかかりませんでした。
全国から合宿に集まった私のような参加者はいわば「ゲスト扱い」。仙台で日常的に指導を受ける生徒たちとは少し対応が違ったのです。練習が始まると「その他大勢」ではなく、私も先生に直接指導してもらいたい。そんな気持ちが芽生えたものの、合宿に参加していたのは中学、高校生を含め60人以上。名古屋のリンクで受けていた荻野(正子)先生とのマンツーマン指導とは違う団体練習を基本とするものでした。
練習は午前中だけで4時間。午後も4時間以上、リンクで滑りっぱなし。時折、先生からの注意で「キミ、そこの赤い手袋の子」と呼ばれることはあっても、「鈴木明子」という名前はなかなか覚えてもらえません。合宿初日から「エリート」と呼ばれていた荒川さんを含めたオリンピックを狙う10人ほどの選手と、残り大勢のいわゆる「一般クラス」を別々に指導されることもしばしば。私は当然のことながら後者でした。