中畑さんの一言で松井秀喜の「専属運転手」になりました
中畑さんと松井の特訓は短くて1時間、長くて2時間。その間、僕はなにをやっていたかといえば、リビングのコタツに入って、中畑さんの奥さまとミカンを食べながらテレビを見ている。
考えてみれば、松井と僕は当時、レギュラーを目指す同世代のライバルです。一緒に素振りをさせてくれてもいいようなものですが、中畑さんは松井につきっきり。スイングを見て下さい、と直談判することもなく、当たり前のようにコタツでお茶をすすっている僕も僕です。
「じゃあなに? 大介は2人の練習が終わるのをただ待っているだけなわけ? それじゃあ、ただの運転手じゃん。よし、分かった。今度の大介の誕生日には、オレが白い手袋と制帽をプレゼントしてやるよ」
そう言って、ベテランの広沢克実さんら当時の先輩方によくイジられたものです。のちに、中畑さんに「あのとき、一緒に教えてくれたら、僕ももう少し打てたんじゃないですか。よく考えたら、一回も中畑さんにバッティングを教えてもらったことないですよ」と言ったら、「いいんだよ大介は」とゲラゲラ笑って流されました。