ビーチW杯ロシア大会 2連勝のオズ日本が23日に大一番ロシア戦に臨む
ビーチサッカー日本代表がロシア・モスクワで開催されている「FIFAビーチサッカー ワールドカップ ロシア2021」でタフな試合に勝利し、グループリーグ2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。
大会初戦のパラグアイ戦(19日)を「0-3」の劣勢から終盤に追い上げ、最後は「7-4」として勝ち点3をゲットした日本代表。グループリーグ2戦目のアメリカ戦(日本時間21日午後10時30分キックオフ)も、先制点を奪われる展開となった。
第1ピリオドの3分にアメリカの背番号10・FPシルベイラがピッチ中央左からオーバヘッドシュートを放ち、この強烈ミドルがゴール右にズバッと決まったのである。
「あのシュートはどうしようもない」とシュートコースを消そうと体を寄せたオズ監督兼選手も脱帽するしかなかったスーパーゴールだった。
もっとも、先制されたくらいで意気消沈することなく、気持ちをスパッと前向きに切り替えられるのが日本代表の強みだ。
失点の1分後、FP奥山正憲が、FP原口翔太郎との連係プレーでシュート態勢に持ち込み、最後は相手のタックルを振り切りながら右足先でコントロールショット。GKの股間越しにワザありの同点ゴールが決まった。
1-1で迎えた第2ピリオド終了間際の23分。
2年前のW杯でMVPを獲得した頼れる男が、ついに本領を発揮した。
カウンターから左サイドのFP上里琢文にボールが入った。右サイドを走るオズ。2人の間にロシアの選手が1人。「2対1」の局面となった。
ここからボール保持者がシュートにまで持ち込むか、それともタイミングを計って味方にラストパスを送るかーー。
この2対1の局面からのプレーは「練習で何回も繰り返したパターン」(オズ)。
上里は大黒柱にパスを送ることを選択し、オズが右足ダイレクトで抑えの利いた強烈シュート! ゴール左にボールを突き刺したオズは、ユニフォーム左胸の「日の丸」にキスしながら、スタンドで日章旗を振りながら応援するサポーターに向かって雄叫びを上げた。
初戦のパラグアイ戦では得意のFKがうまくヒットせず、ゴールの枠を大きく外すミスショットが目立った。口癖は「自分が得点するよりもチームの勝利が一番の幸せ」だが、それでも自身のゴールがチームメートを奮い立たせ、相手の闘争心を萎えさせることを知っているだけに1秒でも早くモスクワでの初ゴールが欲しかったはず。
その気持ちが、ゴール後の喜びのパフォーマンスとなって現れたのだろう。
第3ピリオドに入って28分、精力的な動きで攻守に大活躍のFP大場崇晃が、相手GKのファウルを受けてPKのチャンス。大場は右足で強烈なシュートをゴールほぼ正面に蹴り込んだ。
31分には、パラグアイ戦ハットトリックのFP山内悠誠が、相手ゴール前の奥山との絶妙ワンツーパスで左サイドに抜け出し、至近距離から左足を振り抜いてニアサイドに叩き込んだ。
初戦のロシア戦から好守連発の相手GKもなすすべなしの、破壊力満点のシュートだった。
4-2とリードして試合も残り1分。このままスッキリと逃げ切りたいところだったが、足の止まったアメリカの選手を過小評価してしまったのか、勝利を確信して緊張の糸が切れかかったのか、ゴール右サイドの選手にフリーでシュートを打たれ、やはりフリーだった左サイドの選手に押し込まれてしまった。
ルーズなマークによる余計な失点と言わざるを得ないだろう。
「アメリカのスローな攻めのテンポに対して、日本選手はプレスを掛けながら<ハメようとしていた>が、なかなかうまくいかなくて試合の主導権を握れない時間が続きました。試合途中から無理なプレスを控えるなど戦術を変え、次第に日本がペースを握れるようになったが、3戦目に優勝候補の難敵ロシアとの対戦も控え、アメリカ戦は常に3点くらいのリードを保ちながら大黒柱のオズを休ませたり、ベンチスタート組の選手を長くプレーさせたり、余裕を持ちながらの試合展開としたかった。これが残念な部分でしたが、それでも2試合連続の逆転勝ちというのは選手のメンタルが強化され、チームとしての地力も上がっている証拠。このまま調子を上げて勝ち進んで欲しい」(元サッカーダイジェスト編集長の六川亨氏)
グループリーグ3戦目は、優勝候補のホスト国ロシアと対戦する。
日本ーアメリカ戦の終了後にパラグアイと対戦したロシアは4-4の同点からPK戦にもつれ、辛くも5-4で逃げ切った。
日本とロシアのどちらが3連勝を飾り、グループリーグ1位を確保するか。注目の大一番のキックオフは、日本時間23日午前2時30分である。
▽茂怜羅オズのコメント
「前回2019年パラグアイ大会でも初戦でパラグアイと、2戦目でアメリカと対戦して苦しい試合になりました。グループリーグは毎試合が厳しい戦いになりますが、今日も最後は結果が出たことを喜びたいと思います。グループリーグを1位で突破したいと思っていますのでしっかりと休息も取り、次のロシア戦に備えたいです。日本の皆さんのパワーは届いています。またパワーを送ってください。頑張ります!」
▽河合雄介のコメント
「自分自身の調子は良かったです。2戦目なので(各選手は)緊張もほぐれてプレーできていたと思います。田畑コーチの戦術をチームとして共有できたことが勝因だと思います。グループリーグの突破も決まりましたが、これからも自分たちは監督とコーチの指示を聞き、勝利のために頑張りたいと思います」
▽大場崇晃のコメント
「アメリカは、2年前のパラグアイ大会の時とやり方を変えてきたし、良い選手の多いチーム。そんな相手に勝ち切れたことは、チームとしてより自信になったと思います。試合途中の戦術変更が功を奏したと思います。敢えて<相手にボールを回させる>という感覚が良かったと思います。落ち着きが、緩みにならないように気を付けながらロシア戦では、絶対に勝つという強い気持ちでプレーしたいと思います」
▽奥山正憲のコメント
「アメリカは攻守の切り替えが早く、ピヴォ(FW)に対して複数選手で挟み込んでくるなど難しい相手でした。(ゴールの場面は)GKが出てきたのが分かったので<GKが構える前に早くシュートを打とう>と思いました。(大会2試合目の自身初得点に)ピヴォ(FW)なのでホッとしました。前の選手は、得点するとリズムが出てきますから。(連勝して決勝トーナメント進出決定にも)チームは<ロシアには負けたくない>という思いがあり、気持ちなどは緩んだりはしていません。これまでの2試合、良い形でオーバーヘッドシュートを打てていないのでぜひ決めたいと思います」
▽原口翔太郎のコメント
「W杯出場は3回目なのでいつも通りのコンディションで落ち着いてプレーできています。国や会場によって砂の特性が違いますが、自分にとっては<走りやすくてボールを扱いやすい>砂です。日本の選手たちには合っていると思います。(奥山選手の得点シーンについて)目の前でボールがバウンドする際、イケるかも! と思って詰めたら案の定、奥山選手がボールを拾ってゴールを決めてくれた。試合の後に『互いに(チャンスになると)信じてボールに食らいつけた』と話し合いました。常に得点、アシストを意識しながらプレーしています。次のロシア戦で思いを体現し、チームの勝利に繋げたいと思ってます」