「あしあと」勝目梓著
■性行為の最中に創作のヒントがひらめき
会社勤務のかたわらミステリー小説を発表する兼業作家の高橋は、妻の史子から聞いた夢の話をヒントに作品を書いたところ好評だったため、以来、史子の夢に頼って執筆をつづけていた。史子は性行為の最中、強いエクスタシーを得たときだけ予感めいたひらめきを得るのだ。実際に、数々の事件事故を予見したこともあった。しかし、そのひらめきをもたらすエクスタシーがいつ来るのかは2人にも分からない。締め切りが刻々と迫る中、ある夜、高橋はセックスを終えた史子からいつものパソコンではなく万年筆で小説を書くよう勧められる。(「万年筆」)
作家生活40周年となる著者の到達点ともいえる官能性に満ちた短編作品集。
(文藝春秋 1700円)