「2030年の旅」恩田陸ほか著
康久と喜良は、友人の十時(ととき)が暮らすイギリスのとある街に立つ。しかし、実際には康久の体はマレーシア、喜良は香港にあり、「リモート・リアル」の技術によって十時の脳を介してイメージを共有しているだけだ。それでも2人にはその場にいるように感じられる。
十時が2人を導いたのは、ウオーキング用に整備された「フットパス」だった。実は2週間前に天文学者の十時は、学会で一緒になった3人の研究者とこの道を散歩したのだが、その中のひとりが大切な懐中時計を落としてしまったという。いくら捜しても見つからず、2人に助けを求めてきたのだ。(恩田陸著「逍遥」)
ほか、瀬名秀明氏や小路幸也氏ら人気作家8人がオリンピックからさらに10年後の2030年を舞台に描いた作品集。
(中央公論新社 540円+税)