「道標」今野敏著
安積剛志警部補が率いる、東京湾臨海署刑事課強行班第1係・通称「安積班」には、そこに集まった人々が自然と互いに力を合わせたくなる、不思議な結束力があった。そんな現在の安積班が出来上がるまでの、若かりし日々の出来事をつづった短編連作集が本書だ。
たとえば、警察学校時代に厳しい訓練のなかで挫折寸前に追い込まれた仲間とのエピソードが盛り込まれた「初任教養」、警察学校を卒業した後に中央署地域課に配属された安積が非行少年あがりの若者に慕われる物語「捕り物」、念願かなって刑事課に配属されてすぐに起きた事件に対して安積の原点となる捜査姿勢が見え隠れする「熾火」など、全10編を収録。安積という男が積み重ねてきた日々を読み進めるうち、彼の哲学や魅力の秘密がわかってくる。
大ベストセラーの安積班シリーズの原点が読み解ける最新作とあって、ファンなら、わくわくすること必至。
もちろん初めて読む人でも楽しめる内容になっている。
(角川春樹事務所 1600円+税)